ご飯は左、汁物は右に置く。
何年も生きてきたのに、ここ数年で知った情報である。教養や育ちのあるなしは別として「知っていても知らなくても良い情報」だったのだ。
学生の頃に必死になって覚えたあの数式も、大人になると必要が無くて記憶から抜け落ちていく。もちろんその数式が必要な仕事に就いていれば話は別だろうが、俺は必死に覚えたプログラミングを生かせる仕事には就かなかった。
そういう経験を繰り返すと、”記憶というのは有限なモノでSDカードみたく無意識に削除と書き込みを繰り返している”という事実にたどり着く。
しかし、SDカードのデータは削除しても情報自体は残るのだ。（正確に言えばもっと色々理論的な話はあるらしいが）
ご飯は左、汁物は右に置く。
これもおそらく小さい頃に流し見していた主婦向けのテレビ番組で見たことがあったのだ。だがもうその記憶はない。じゃあなんでテレビで観たと思ったのか。
ご飯と汁物を並べた時「あ〜これどっちに置くのが正解だっけ」と記憶から正解を探した。つまり脳は正解が記憶にあると判断したからではないか。その情報をテレビで観たのでは。
記憶の継ぎ接ぎである。いわば創作。
案外記憶というのは思い出すときに勝手に継ぎ接ぎしているように思う。そう考えるとトラウマみたいな、暗い過去ももっとシンプルに感じると思う。「あの時ああだったから今はこうなんだ」と関連づけて落ち込むより、今は今だから。
ご飯は左、汁物は右に置く。
その位置がどちらだろうが美味いものは美味いんだよな、と思いながら今日も炊き立てのお米の匂いを嗅ぎながら味噌汁を飲んでほっと一息するのです。
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